2007 |
01,26 |
«遠ざかる影»
レッド&イエロー。
3章終了の少し後。
ちょっと切ない系です。上手く伝わるといいんですけど。文体は一部ちょっと冒険。
3章終了の少し後。
ちょっと切ない系です。上手く伝わるといいんですけど。文体は一部ちょっと冒険。
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「さようなら」
その言葉の意味を、オレは思い出した。
遠ざかる影
うまくやれてたと思ったんだよ。
ゴールドとの特訓が一段落して帰ってきたマサラタウンで、オレを呼び止めたナナミさんの隣にいる子が誰なのかは、ちゃんと分かってたんだ。
ただ、急に喉が渇いて、名前を呼べなくなったってだけで。
そのたんぽぽ色のポニーテールの子が、山吹色のワンピースの裾の当たりを握り締めながら、オレの名前を呼んだ。聞き慣れた口調と声で。
そしたら張り付いてた喉からようやく呼びたかった名前が滑り出た。
その子は、ちょっとだけ笑った。懐かしい、ほにゃりとした笑顔で。
まったく女の子の格好をしたイエローと会うのは、これが初めてだったんだ。
……もっとも、後でそれも勘違いと知るんだけど。
それはあくまで後の話だ。
面と向かったら、今度は妙にすらすら口が回った。
よ、久しぶり。元気してた? レッドさんこそ怪我の具合は? そっちは全然オッケー。オマエらこそ大変だったんじゃないか、後始末? あ、それは協会の人たちがやってくれました。グリーンさんはいろいろ手伝ってたみたいですけど。はは、アイツ責任感強いからな。ですね。…………。…………。……そういえばゴールドがさ! ゴールドさんが? えっと……アイツなかなか筋がいいよ。クリスさんもそんなこと言ってました。クリス? ああ、あのスイクン連れてた子か。はい、今も博士のお仕事手伝ってますよ。へぇ……。…………。…………。……あの、レッドさん。あ、そうだ。アイツは? あの赤毛の。シルバーさん? ブルーさんと一緒に行きましたけど、一緒に暮らすとかいうわけじゃないみたいです。そっか、元気なら良かった。はい、お元気みたいです。ブルーさんも嬉しそうでした。そっかぁ~。……あの、レッドさんっ! んっ、な、何? …………。…………。………………。………………。
「……ボク用事があるんで、そろそろ。久しぶりに会えて、嬉しかったです」
「ああ、オレも。今度はゆっくり話そうな」
「はい……それじゃあ」
あれ、イエロー疲れてんのかな。
小さく答えて、少し上目遣いにオレを見上げた笑顔が。
「さようなら、レッドさん」
オレから見たって、失敗の笑顔だった。
大急ぎで頭を下げる直前、それがぐにゃりと歪むのが見えた。目の前にたんぽぽ色の髪の束が勢い良く翻る。小さな風が巻いて、オレの鼻先を叩く。黄色の影は尾を引いて、さぁっとオレから離れていく。
――そういえば。
さようなら、って、別れの言葉だったよな。
おい、なんだよ。なんなんだよ。
今のはただの挨拶じゃないか。
何改めて辞書みたいな文章考えてるんだ。
ドードリオに跨ったイエローは、ぐんぐん遠ざかっていく。
振り返りもしない。手も振らない。
オレの知ってる姿では麦わら帽子が乗ってたところに黄色い尻尾をなびかせたイエローは、ぐんぐん小さくなっていく。
ちょっと待てよ。
オレはあんな寂しい響きの挨拶なんかを聞くために、頑張ったんじゃないぞ。
頑張った?
いったい、オレは何を頑張る必要があったんだ?
だって、あの子はイエローじゃないか。
気付けばオレはプテを解放して、イエローが消えた方角へ飛び立っていた。
ただ、喉が渇いて仕方なかった。
-fine-
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吐き出せたらいいなぁと思っている。
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