2007 |
01,24 |
«虫と石ころ»
黄→赤風味。
性別バレはしています。
かわいくて軽い文章に、最近なってくれません。もぎゃー。
性別バレはしています。
かわいくて軽い文章に、最近なってくれません。もぎゃー。
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「助けて!」
自分にしがみついて震える女の子を、正直に、可愛いと思った。
虫と石ころ
「はい。もう大丈夫だよ」
カーディガンの背中にもそりと乗った毛虫を取り除いてあげると、女の子は瞳に涙を浮べたまま、ますますぎゅうっと抱きついてきた。
「……ありがとうね、イエロー!」
服をきつく握り締めてくる手も、縮こまった肩も、まだ小刻みに震えている。
その頼りなげな姿も、瞳を潤ませてはにかむ笑顔も、イエローは正直に可愛いと思った。
「あの木は毛虫が好むから、下を通るときは気をつけないとね」
「うん、そうする。ああ怖かった……でも、すごいねイエロー。毛虫触るの、怖くないの?」
「えっとね、刺されないようにするコツがあって――」
「そういうことじゃなくて……」
わたしなんて、あのもじゃもじゃが見えただけで悲鳴上げちゃう。
そう肩を竦める様子も可愛らしかった。
女の子、なんだなぁ。
手を振って去っていく背中を見送りながら、イエローは考える。
女の子、なんだよなぁ。
今しがた毛虫をつまみあげた自分の手を、しげしげと眺めた。
自分は、虫だらけの森の中を平気で散歩する。どころか、草むらに寝転んで、平気で転寝もする。
そもそも、自分はポケモントレーナー。大事な友達にはいもむしポケモンだっていたけれど、抱き上げるのを躊躇ったこともなかった。
躊躇いたいとも、思わない。けれど。
(可愛かった、なぁ……)
なんとなく、足元の石をコツンと蹴ってみた。
なんだかそんな気分になったので。
「おっ」
突然しゃがみこんだレッドは、その手に小さな虫を捕まえていた。
「あ、ハサミムシですね」
「イエロー、怖くないの?」
きょとんと覗き込まれて、いつぞやの女の子のことが不意に頭を過ぎった。
「……怖いほうが、いいんでしょうか」
「え……?」
「いっ、いいえっ! なななんでもないですっ」
大慌てで口を塞いだところで、口走った言葉は回収出来ない。気まずく地面に落ちた視界の中、放たれたハサミムシがわたわたと巣穴に戻っていく。
「虫とか、苦手な女の子多いじゃん」
「……でも、それじゃあトキワの森は歩けませんし」
ぽん、と。
頭に軽い衝撃が落ちて、くしゃりと前髪をかき混ぜた。
「だよなぁ!」
満面の、笑顔で。
そのまま立ち上がったレッドを、イエローはしばらく目をまん丸くして見上げた。
「どした? 行こうぜ」
「……あ、はいっ」
慌てて立ち上がり、並んで歩き出す。
なんとなく、足元の石を思い切り蹴ってみた。
何やってんだよと笑うレッドに、もう一つ蹴飛ばしてみせたら、見てろよと隣でもけいんと爪先が鳴った。
爪先は鳴り続けた。笑い声と一緒に。
あの女の子のことは、それきり忘れてしまった。
-fine-
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吐き出せないまま積もりに積もった妄想がいっぱいあって困っている。
吐き出せたらいいなぁと思っている。
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