2007 |
01,23 |
«階段は、まだ途中»
レッドさん16歳。
前半のテンションでもそのうち書いてみたいです。企むブルー姐さん、書いてて楽しい(笑)
ちなみに作中の小道具は『グラッパ』といいます。イタリア土産に買ってきて私も大変なことになりました。(『大変』の方向性違いますけど)
あ。注釈するまでもなく、レイエです。
前半のテンションでもそのうち書いてみたいです。企むブルー姐さん、書いてて楽しい(笑)
ちなみに作中の小道具は『グラッパ』といいます。イタリア土産に買ってきて私も大変なことになりました。(『大変』の方向性違いますけど)
あ。注釈するまでもなく、レイエです。
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「投げるなよ!」
どさりとオレの懐に落ちてきた熱源は、驚くほど軽くて、ほんわりと甘い香りがした。
階段は、まだ途中
「ふにゅふみゃぁ~」
「……おいブルー?! なんか宇宙語喋ってるぞ、イエローが?!」
「アンタの耳が宇宙仕様なんじゃないの? それにアタシは投げてないわよ、失礼ね」
……おかしい。確かここはオーキド博士の家のはずなんだけど、なんでここまで荒れ模様になれたんだ?
勿論研究室じゃない、自宅の方。ただし、博士は留守。……ああ、それが原因か。
久しぶりにグリーンがトキワから帰省してきて、博士に用があるとかでイエローも一緒に来て、いつの間にかブルーが当然のようにいて、たまたまオレもマサラに戻ってて――
で、どうしてイエローが今、オレの懐でふにゃふにゃしているんだよ?
左手は腰、右手の人差し指はびしっとオレを差した姿勢でブルーが高らかに宣言する。
「アタシは、突き飛ばしたのよ!」
「同じじゃねぇかぁ! ……っと?!」
やべ、イエローを床に落とす所だった。
慌てて抱えなおしたイエローは、力どころか骨までなくしたみたいに、くたくたと柔らかい。顔なんて、唐辛子並みに真っ赤っか。
「おい……、イエロー?」
「……りぇっど、ひゃぁん~?」
ぴたぴた頬を叩いたら、渦を巻いていた目がようやくくるりと回ってオレを見た。
……これは、ヤバイ。
「おい、この瓶はどうした?」
「さっきイエローに開けてもらったの。ああ、何ジュースだか教えてもらい損ねちゃったわ。グリーン、知ってる?」
「……オマエ、これ……ナナミ姉さんが誰かから土産に貰った食前酒だぞ」
「あら☆」
「あらじゃねぇだろブルーっ?!」
正体不明の瓶だから試し飲みさせたんだな、間違いなく……。
その緑色で細長い、一見可愛らしい瓶をしげしげと眺めていたグリーンが、更に恐ろしい事実を告げた。
「確か、度数40%のはずだが」
「あらあら☆」
「あらあらじゃねぇだろブルーっ?! 大丈夫なのかよ、そんなの飲んで……」
「一口だけみたいだから多分大丈夫でしょ。アルコールなんてイエローは飲んだことないでしょうから、余計効いちゃったのねぇ」
なんとなく十代半ばのタメとしては突っ込みたいニュアンスなんですけど、ブルーさん?? ……でも知らない方が幸せなことも世の中には一杯ある気がするので、そこは流しておく。
「そりゃあ、イエローも蛸みたいになっちゃうはずだよな……」
鳴き声が寝息に変わり始めたイエローを起こさないように気を付けながら、くてりと胸に預けられた体重を、床へ移そうと試みた。
と。再び、びしぃと突きつけられた人差し指。
「こんなところに寝かせちゃ駄目でしょ! 何の為にアンタに渡したと思ってるの。ちゃんと送ってあげなさい!」
「はぁ?! 送るってオマ…………ぇ、トキワまでかよっ」
やべ、大声出しちまった……よかった、イエロー起きてない。
「二階の姉さんの部屋が空いている。ここで寝かすよりはマシだろう」
「そーゆー訳で、よろしくねレッド♪」
……簡単に言ってくれるよ。
仕方ないので抱え上げたら、仔猫みたいな声を漏らしてイエローが身を捩った。
………………。
「ちょっと手伝え、グリーン」
「何よ。どうしてオンブ? イエローそんなに重くないでしょうに」
「こっちの方が楽なんだ――サンキュ、グリーン。で、ナナミさんの部屋って階段上ったら……」
ぎし、ぎし。
二人分の体重に、階段が一歩ごとに抗議の声を上げる。
……いや、オレが重くなったってことかな、多分。イエローは冗談じゃなしに、羽のように軽いから。
オレも、もう十六歳。それなりに成長している。
一歩ごとに。
頬がくすぐられる。
さらさら揺れる日向色の前髪に。
すやすやと快い寝息は、首の辺りをくすぐってくる。
ぞわりと、背筋に虫が這った。
さっきからずっと花みたいな香りがするんだけど、これは酒の臭いとは違うと思う。
ホントに、簡単に言ってくれるよ。
だからホントにヤバイんだって。
頬から、首から、肩から、背中全体から――熱が染み入ってきて、溜まっていくような気がするんだ。
まだ『気がする』で留まってるうちに、早くこの熱源を下ろしてしまわないと。
大変なことになる、気がするんだ。
二階って、こんなに遠かったっけ?
オツキミ山の頂上にでも登りきった気分だ。
グリーンに場所を確認しておいたから、目指すドアは迷わなかった。……っと、電気のスイッチ何処だ? いいや、先に下ろそう。目を凝らせばベッドはすぐに見分けられる。
とさり。
……ようやく、背中が冷めていく。
ゆっくりと息を吐いて、身体の中の熱も追い出した。
電気のスイッチが見つからなかったのは良かったんだか、悪かったんだか。イエローがよく見えない代わりに、やたらとさっきの光景が鮮明に蘇る。
オレをじっと見上げてくる、潤んだ大きな黒い瞳が。
そこに映ってるオレの惚けた顔を見たときに、なんだかヤバイ気がしたんだよ。
オレもそれなりに成長している。
でも、もう少しだけ気付かずにいたいんだ。
ましてや酒の影響なんて願い下げ。
ぱたむ。こもるような音を立てて閉ざしたドアは、背中に隠した。
階段を下りる間に熱も残像も晴れるだろう。
これを上るときがまた来るのなら、今度は酔ってないキミと一緒がいいな。それは気のせいじゃなしに考えた。
-fine-
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吐き出せたらいいなぁと思っている。
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