2006 |
09,24 |
«ハジマリ»
TRPG(DX2nd)で使っている我が子・アキラがチルドレンの施設に入るときのお話。
書いたのはもう相当に前です。
るえらんに見せる約束をしたので、アップしてみました~。
『暁』というのはアキラの元々の名前です。読みは「あきら」
書いたのはもう相当に前です。
るえらんに見せる約束をしたので、アップしてみました~。
『暁』というのはアキラの元々の名前です。読みは「あきら」
その日は、いつもの日と同じようにやってきた。
ハジマリ
――その日はお客さまが来ていて。
ぼくは自分の部屋で、買ってもらったばかりのランドセルを開けたり閉めたりしていた。
あとちょっとで小学生。幼稚園も保育園も通ってなかったぼくは入学式が楽しみで楽しみで、絵本やらくがき帳をランドセルに入れてみたり、入れては出してみたり、自己紹介の練習をしてみたり……とにかくそわそわしていた。
「暁」
おとうさんの声に振り向くと、ふすまの向こうに、おとうさんが知らないスーツ姿のおじさんと立っていた。
おじさんはしゃがんで笑った。多分、笑ったんだと思う。
「初めまして、暁くん」
「暁、この人達と出かけるから、支度しなさい」
どこに行くの? 訊いたけど、おとうさんは黙っていた。
ぼくはちょっと考えて、ジャンパーを着てから、いつものリュックではなくランドセルをしょってみた。
「……いいだろう、それも持って行きなさい」
ランドセルは思っていたよりも重かったけど、大人になったみたいでドキドキした。
歩くたびに中に入れた絵本とらくがき帳がパタパタ鳴るのが面白くて、わざと跳ねるように歩いてみた。
おとうさんは何も言わなかった。
おかあさんは廊下にはいなかった。
玄関の外にはテレビで見るような黒くてピカピカした車が停まっていて、やっぱりスーツを着た知らない人が、あと二人いた。
車の開いたドアの前に立たされて振り向くと、おとうさんはまだ玄関の前にいた。
「おとうさんは?」
おとうさんは少しだけ首を振った。
「おかあさんは?」
おとうさんは、黙っていた。
なんか、変。
いつもは外に出ちゃダメって言われるのに、今日はぼく一人でおでかけ?
ランドセルの上から背中を押された。
もう一度、おとうさんを見た。
おとうさんは、やっぱり黙っていた。
「……おとうさん、いってきまーす!」
手を振ると、おとうさんの口がちょっとだけへの字に曲がった、気がした。
バタン。
ドアの閉まる音が怖く感じたのはなんでだろう。
窓の向こう、おとうさんも、ぼくの家も、あっという間に小さくなって、他の家に隠れて見えなくなった。
おかあさんは最後まで見送りに来なかった。
だからぼくは、これが短いお出かけだって、思ってたんだ。
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吐き出せたらいいなぁと思っている。
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