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午月座

小噺修行中。概ね二次創作。カテゴリ要確認のこと。
2025
05,07

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2006
11,12

«LA PIETA»

【PIETA】1.哀れみ 2.信仰心 
   3.[美術]ピエタ像(死せるキリストを抱いて嘆くマリアの像)

90%オリジナル。
ナイトウィザード(NW)で使っている転生者キャラの裏話になるんですけど、前世ネタなので全然NWとは関係ありません。
分かる人にしか通じない話になってます。ごめんなさい。

世界観、剣と魔法の世界。
勇者に救われた世界の中で。


この祈りは傲慢ですか。






=============================================
私は蒼穹を見上げ続ける。





LA PIETA





蒼穹の元
世界は、歓喜に湧き立ち

鮮やかに、生き生きと
色とりどりの花弁が、紙片が、踊るように舞い上がり

それらは痛苦から解き放たれた数多の命に似て
勇者に護られた数多の命は、蒼穹を見上げ

蒼穹は全てを包み込み、今日も穏やかに青を広げる





――そう。世界は歓喜に湧き立ち。
まるで涙など忘れたかのよう。

忘れることはあっても、枯れることはないのだ。
もしかしたら世界中の人々が涙の拒絶を祈ったから、神はそれを一所にお集めになられたのかもしれない。

これを『試練』だと、司祭様は仰った。





祭壇に差す陽は清廉。
それを受ける剣は、神々しい輝きを纏い。
『世界を救いし勇者の剣』は、神殿の最奥に聖体のごとく祀られた。

本来なら、対を成す剣。
もう一振りは勇者の手に。


この一振りは、残された私の手に。


世界はそれを平和の象徴と祀り上げた。





民は永劫に感謝するであろう。

暗雲を払い、雷鳴を追って、蒼穹に消えた勇者に。

勇者は今も世界を護り続けている。
何故なら、蒼穹が絶えないから。

澄み渡る空の下、人々の笑顔も絶えない。

蒼穹はいつだって、この頭上に広がっている。





――そう、いつだって、広がっている。

何もない、空が。
ちいさなヒビさえ見つけられぬ空が。





きっと、あのひとは、この蒼穹の向こうで今も戦い続けている。

私には届かない。





私には、あのひとの傷を癒す力があった。

蒼穹越しの祈りは、あのひとの傷を僅かでも癒せているだろうか?




 
いつしか。
人は私を、『哀しみの聖女』と呼んだ。

人々の代わりに涙を流し続け、蒼穹を見守り続ける聖女。
蒼穹の向こうで戦い続け、世界を護り続ける勇者。

それは吟遊詩人の詩に乗り、早くも伝承に変わり始めている。





これは『試練』だと。
祈りなさいと。
祈れば必ず届くと。
祈ることしか出来ないと。
――司祭様は仰る。





静謐な神殿の奥、神剣は厳かに輝く。
世界に残された勇者の加護と、人は呼ぶ。





そう呼んで、私の手から取り上げたあのひとの剣。





神よ、そう思うのは傲慢ですか。





――祭壇を侵して、神剣を掴み上げる。
けれど剣は、仄かな光を放つだけ。
あのひとが翳したときのような鮮烈な光は溢れはしない。
あのひとはこの剣が私を気に入ったみたいだと言っていたけれど、剣にとって主は、ただあのひと一人だけ。

分かってる。


分かってる。
だからやっぱり、あのひとは生きている。





祈れば、助けられますか。

祈れば、あのひとは戻りますか。

神よ、これを試練と呼ぶなら、乗り越えれば私は奇跡を望めるのですか。





神よ。





私はいつまで蒼穹を仰ぎ続ければ。
このヒビ一つない蒼穹を。





この蒼穹はあの日、確かに黒き口を開けて、あのひとを呑み込んだのです――















神よ。





私は祈っています。

この平和の象徴たる蒼穹にヒビが入ることを。





神よ、それは傲慢ですか。

あのひとを裏切っていますか。





神剣は淡く輝き続ける。
あのひとへ繋がる唯一の絆。

あのひとが世界を護る為に託したであろうその剣を、私は自分の為だけに空に掲げた。

蒼穹は、裂けなかった。

それでも私は試し続ける。


主持つ剣は私に従いはしない。
それはあのひとの制止の言葉に聞こえた。


それでも私は試し続ける。





――だって。
神に祈り。
人々の代わりに、涙を引き受けて。
それが私の役割だと、納得なんか出来ないの。

あのひとが望んだ世界の平和を。あのひとが自ら選んだ道を。
見守ってあげることも出来ないの。





神よ、これは傲慢ですか。





あのひとは――あなたは、怒るでしょうか。

























あのひとも、私の祈りも全て呑み込んで。
蒼穹は穏やかに青を広げる。

私は蒼穹を見上げ続ける。





蒼穹は人々を穏やかに護り、その青を何処までも、深く深く完璧に広げて。

いつまでも。


いつまでも。





いつまでも。

























いつまでも。

























そして私達は、ただ伝承の向こうに。





-Non finisce la fine...
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吐き出せないまま積もりに積もった妄想がいっぱいあって困っている。
吐き出せたらいいなぁと思っている。

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